You’re RIGHT, I’m RIGHT too. There’s no one LEFT here.

  十二歳の息子がいるとはとても見えないショートの黒髪のつやがまず目を引いた。当然寄っているべき目尻のシワもなく、何でもないような白い肌が、目に眩しくない程度にそこにある。その人が発する雰囲気を一言で表すなら、少女性というものだった。若作りをしていると言うわけではなく、自らに与えられた課題や責任を淡々とこなし、さらに自分で工夫しながらそこに彩りを加えもする。当たり前のように食卓に花を飾っているのだろう。えんじ色のパーカーに乗った顔が俺に近づく。

 正しい大人などはいないのに、そこに紛れもない正しさを感じてたじろいでしまう。そうした正しさの一つの最先端にいるであろうその人は、俺を見上げながらこういった。

「あの、その袋を、こちらに貸してもらえませんか」

 俺は自分の感情に丁寧になりすぎている。だから人とうまく話すことができない。そのことにまったく興味を持たない人妻に、あえて人妻という言葉を使って女性に何か違う属性を付与しようと、もっと言えば汚そうとしている自分の浅ましさにはまったく気づかないその人に、俺は袋を差し出す。

「ありがとうございます」

 その人はかき集めた落ち葉をまとめてゴミ袋にがさがさと入れていく。となりでその人の、十二歳の息子(会話の流れで小六と言うのは知っていた)が袋を支えていて、俺はその手と自分の手とを見比べる。そう大差ない。

「もう一杯入るかな?」

 その人の息子に言ったのか、それとも俺に言ったのか。俺は息子をちらと見る。息子は黙々と落ち葉を袋に入れ続ける。俺は

「もう少し入りますね」

 とゴミ袋を上から押しつけてスペースを作る。

「ありがとうございます」

 さっきより少し弾む声でガサッと落ち葉がまた入る。俺はもう一度その人の目を見た。朝の公園はわれわれの手によって、そう、私と、あなたと、みんなの手によってきれいになっていく。俺の汚れた心も、少しだけ、きれいになるだろうか。大人はそんな細かいことは多く考えない。ただ目の前のことを慈しむのだ。


 でも理由は何あれ、朝の八時に公園掃除をしているその人は正しいし、俺も正しい。そしてみんなジュースをもらって、仏頂面の息子も嬉しそうにジュースをもらって、おのおのの家に帰る。きれいになった公園には朝日が高くから差し込みしかしそこには誰もいない。


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