ロココのココロ

 誰も知らない。房枝の秘密。スーパーでレジ打ちをする房枝の、その指の節くれのトコロ。長年家事労働で酷使した指の関節の節くれの模様がそのままロココ。客が途絶え、レジ打ちをいったん止めて皺をなぞる房枝のしぐさがロコツ。目を閉じて節をなぞると古い家具を触れているような気がして得られる恍惚がテゴロ。そうこうしているうちに束の間ヨーロッパ宮廷に飛んでいく房枝のココロ。いつの間にかふわふわした服の中世フランスのおばさん連と談笑している房枝のゴガク。あまりに面白いものだから大笑いしそうになる房枝が自制して口元に当てる「ダスター。」

 「ダスター。どうしたの。臭うの?」指摘されて我に返り頬を染める様子はまるでコドモ。すぐに業務に戻り次のお客様の籠から取り出した昆布はトロロ。タイムセールが始まり忙しさに飲み込まれながらもお客様を迎え入れる際に見せる房枝の笑顔は華やいでロココ。

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