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 「……ポップフライ」

 懐かしいねー、ってヘラヘラ接客してたらふっと真顔になっていう。

「ねえ。あなたって、内野フライみたい」

 昔よく、一緒に野球に行ったな。ドームの天井に届きそうな飛球を二人で見上げて

「なんで地元帰んなかったの?」

 東京で出会って、付き合って、しばらくして、別れて、彼女は地元で就職して、僕は

「東京で一旗揚げるつもりが、こんな常磐線で一本のところにいるんだから、日本せまっ」

 彼女は好きだった笑顔を見せて、僕はバイトの制服をいじりだして、

「あなたの場合、Jターンっていうのもなんか違うよね、Pターン? お菓子みたい」

 見たことない財布から支払いして店を出て行った彼女の背中を見ながら、ポテンヒットあるかもよ、なんて冗談も言えず、果たしてボールがフィールドに落ちたら僕は走れるのか、どこに? ベンチにも戻れねー、監督もいねー、っていっそ誰か捕球してくれよ。ライ麦もねー、子供でもねー、レンコン畑で泥まみれで抱きしめてくれよ。


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