あたたかさ、やわらかさ、しずけさ

 同じ病室にいた私たちは、よくポイ越しに太陽を見ました。金魚すくいなどしたことのない私たちは、これは光をろ過するものだ、と言って、暑い日には太陽に、不安な夜は蛍光灯にかざして、強すぎる光をろ過したものでした。

 夏が秋に代わる一日、晴れた日。私はもう誰もいなくなったベッドに向けて、太陽の光をポイでろ過して集めます。私たちはろ過された光をひらがなでひかりと呼んでいました。はっきり確かめたことはないですが、私たちの中ではそれはひかりでした。

 夜が来て、病室は少し寒いです。ひかりを集めたベッドに移動し、枕に顔をうずめて、寝ます。ひかりの匂いを吸い込んで、寝ます。

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