投網観光開発

 景気低迷により観光需要が頭打ちの中、旅行者を一網打尽にしたいという思いを込め、元漁師の村山正雄は、投網観光開発株式会社(TOAMI)を立ち上げた。

 TOAMIは従来の観光開発会社と異なり、およそレジャーや観光とかけ離れた山奥や寒村に宿泊施設を設ける。施設の質は都市部のホテルに引けを取らず、世界各国から一流のシェフ、食材、設備をそろえる。立地の不便さを補って余りある施設の豪華さなのだが、宿泊は基本的に無料である。TOAMIの施設利用者は顧客としては想定されておらず、顧客は漁師と呼ばれる、旅行者を網で捕らえる側である。美食・美酒に酔った宿泊客に向けて、漁師が20m四方の大きな網を投げかける。文字通り旅行者を一網打尽にすることができ、日ごろのストレスを解消することができるという。

 宿泊者は自らが旅行中に投網にかかるリスクがあるという申込承諾書にサインをする必要があるが、宿泊者は「施設の豪華絢爛さにそのことを100%忘れてしまう」(村山社長)。しかし昨日、TOAMIの供する食材に物忘れを促進する違法食材が入っているのではないかと警察の捜査が入った。既存の方法にとらわれないことで収益を伸ばしてきたTOAMIであったが、法の網の目からは逃れられないことを自ら示したのは何とも皮肉な話というべきか。


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